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月刊薬膳コラム
■ 程さんの月刊薬膳コラム6月号 ■
「65年間、リュータンでの料理人としての思い出。」

昭和20年に両親が、大阪・梅田の闇市でバラック造りで始めた「リュータン」を、この9月に閉店することにしました。65年間のご愛顧になによりも感謝いたします。なによりも私の体力の限界を感じたためです。これからはテレビやラジオ、雑誌などで料理人としての活動を続けるつもりです。今回は、長年の調理場に立った思い出を少し…。

65年は決して短い時間ではありません。料理人としての思い出はつきません。振り返ると楽しいことばかり。中でも、もし店を開いていなかったら、出会うことのなかったみなさんと懇意にしていただけたこと。これが大きなウエイトを占めます。

 著名人から一般のみなさんまで、ほんとうに気さくにおつきあいいただきました。そうした交流の中で、叱られ、励まされ。なにより、その世界で一流の方は、なにかしら人間的な魅力をそなえ、また、お話にも説得力があり、大きな影響を受けました。

今はなき、ミヤコ蝶々さん。関西喜劇を代表する名女優でした。蝶々さんは、お酒は召し上がらないのに、酒席がお好きで、ことあるごとに、「いま、あけられる?」とお電話をいただき、その席で多くの有名人を紹介してくださいました。そして、蝶々さんは、いいことより、苦いことをよくおっしゃいました。「餃子の味が落ちたんとちゃうか」「お節も、今年は、ね…」などと歯に衣着せず、教えてくださいました。ありがたいことです。いいことは誰でも言う。厳しいこと、きついこと、これを的確にしっかりと注意してくださる方はそう多くはありません。

 思い出に残るお客様は少なくありません。もう30年ばかり前のことでしょうか。帰り際に、料理を持ち帰りたいというお申し出がありました。当時は、持ち帰りは味が落ちるとお断りしておりました。すると、その方は親が寝たきりで、ぜひとも程さんの料理が食べたい…との話。私は、おいしいものは自ら口を運べというのが持論でしたから、そういう動けない方のことなど、思いもせずのお恥ずかしい話でした。世の中には、そういう方が大勢いらっしゃる。そんな当たり前のことも、お客様から教えていただきました。

さらには、お子様が「あのテレビのおっちゃんのところへ行きたい」と親御さんに引っ張られてきたこと。子供は嘘をつきませんから、これはうれしかった。大人はどうしても既成概念を持って、物事を見ますから、ね。

また、鹿児島から時折お見えになる歯医者さん。大変なグルメで、たびたび、香港に出向いては中華料理を満喫していらっしゃったとか。そのお医者さんに、ここは香港よりおいしいと言っていただけたのも忘れられません。こんな方にお褒めいただくのは、恐縮でしたが、料理人にとって、これほどの言葉はありません。

 まだまだ、思い起こせば、キリがありません。本当にみなさんのおかげで、65年間、調理場の火を絶やさずにやってこれた。少し肩の荷が下りた気がします。が、逆に、これまで以上に料理を通じて、世間にほんのわずかでもお返ししていくことができれば、という思いも増します。もちろん、このコラムをはじめとする執筆活動は、これまで以上に精力的に進めるつもりでおります。 今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。



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